近年、終活という言葉はますます耳にする機会が増えました。終活とは、人生の最期を迎えるにあたって身の回りを整理し、次世代にスムーズに引き継ぐための活動を指します。高齢化社会が進む日本では、多くのシニア層が終活に関心を寄せていますが、その実態や具体的な活動内容は多岐にわたります。本記事では、終活市場の現状と今後の展望について、最新のデータや調査結果を基に詳しく解説します。また、終活を始めるための具体的なステップや、役立つ情報もご紹介します。終活に興味を持っている方にとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。

終活市場の現状

リビングで終活アプリを操作している老夫婦のイラスト

終活市場は年々拡大しており、その背景にはさまざまな要因が存在します。まずは市場規模とその成長について詳しく見ていきましょう。また、終活の認知度と実行率についても触れ、現在の終活市場の実態を明らかにします。

市場規模とその成長

終活市場は高齢化社会の進行とともに急速に拡大しています。矢野経済研究所の調査によると、2018年時点でフューネラルビジネス市場規模は1兆8231億円に達しており、2040年までにはさらに増加すると予測されています。これには、死亡者数の増加や社会構造の変化が大きく影響しています。

例えば、エンディング産業展(ENDEX)では毎年多くの企業が集まり、最新の終活サービスや技術が紹介されています。2022年のエンディング産業展には、3日間で12322名の来場者があり、多くの関心を集めました。このようなイベントは、終活市場の成長を象徴するものであり、多くの企業が新たなビジネスチャンスを見出しています。

また、家族葬や直葬といった新しい葬儀形態の普及も市場拡大の一因です。特に家族葬はリーマン・ショック後から急速に広まり、コロナ禍でさらに普及が進みました。鎌倉新書の調査によると、家族葬は全体の55.7%を占め、初めて過半数を超えました。このように、終活市場は多様化しつつあり、個々のニーズに応じたサービスが求められています。

終活の認知度と実行率

終活という言葉自体は非常に高い認知度を誇っています。RashiKが2021年に行った調査では、60代以上の男女521名中96.2%が「終活」という言葉を知っていると回答しました。しかしながら、その中で実際に終活を行ったことがある人はわずか12.4%に過ぎません。

このギャップはなぜ生じるのでしょうか?一つの理由として、終活を始めるタイミングや方法が明確でないことが挙げられます。また、多くの人が「いつかはやらなければならない」と感じつつも、具体的な行動に移せていない現状があります。例えば、「いずれは行いたい」と考えている人が54.7%、「近いうちに始めようと思っている」人が20.2%と、多くの人が終活を後回しにしていることが分かります。

さらに、ハルメク生きかた上手研究所が行った調査でも、60~74歳の77.1%が「終活は必要」と感じている一方で、実際に終活を始めている人は42.4%にとどまっています。また、2018年から2023年までの間で終活を完了している人の割合は6.7%から7.7%とわずかに増加しているものの、大きな変化は見られません。

このように、終活市場には多くの潜在的な需要が存在する一方で、実際の行動に移すための支援や情報提供が不足している現状があります。今後は、より具体的で実践的な終活支援サービスやツールの提供が求められるでしょう。

終活の具体的なステップ

終活を始める際に、何から手をつけたらよいかわからないという方も多いでしょう。ここでは、終活の具体的なステップをいくつかご紹介します。これらのステップを参考に、自分に合った方法で無理なく進めていくことが大切です。

エンディングノートの作成

エンディングノートは、終活の第一歩として非常に重要です。エンディングノートには、自分の希望や考え、財産や連絡先などの情報を記載します。これにより、家族や親しい人に自分の意思を伝えることができます。

エンディングノートに書く内容は多岐にわたります。例えば、自分の葬儀の希望、遺言書の場所、保険や銀行口座の情報、SNSアカウントの管理方法などです。また、家族へのメッセージや思い出の写真を添えることで、自分の人生を振り返る一助にもなります。

エンディングノートは書店やインターネットで入手できますが、最近ではスマートフォン用のアプリも登場しています。これにより、手軽に情報を更新できるため、状況が変わった際にも柔軟に対応できます。

財産や金融口座の整理

次に取り組むべきは、財産や金融口座の整理です。これには、銀行口座、証券口座、不動産などが含まれます。まずは、所有しているすべての資産をリストアップし、どこに何があるかを明確にしましょう。

金融機関には、それぞれ異なる手続きが必要な場合がありますので、事前に確認しておくことが重要です。また、パスワードや暗証番号も整理しておくと良いでしょう。これにより、後々家族が困ることなく手続きを進めることができます。

また、資産運用をしている場合、その運用状況や連絡先も明示しておくと良いでしょう。最近ではNISAやiDeCoといった投資商品も普及していますので、それらの情報も忘れずに記載します。

家や荷物の処分

最後に、自宅や荷物の整理・処分について考えます。多くのシニア層が抱える悩みの一つが、家や荷物の整理です。特に、一人暮らしや夫婦二人暮らしの場合、大量の荷物が残ってしまうことがあります。

まずは、自分にとって本当に必要なものとそうでないものを分類します。家具や衣類、書類などを一つ一つ確認し、不要なものは処分するかリサイクルします。また、思い出の品についても整理し、写真や動画で記録しておくという方法もあります。

家自体についても考慮が必要です。自宅を売却するか、リフォームするか、それとも子供に引き継ぐかといった選択肢があります。家じまいサービスを利用することで、専門家のアドバイスを受けながらスムーズに進めることができます。

以上のような具体的なステップを踏むことで、終活がより現実的で実践的なものとなります。そして、自分自身だけでなく、家族や親しい人々にも安心感を与えることができるでしょう。

終活を支えるサービスとツール

終活をスムーズに進めるためには、様々なサポートサービスや便利なツールが存在します。これらのサービスを活用することで、終活の負担を軽減し、より効果的に進めることができます。以下では、エンディング産業展、身辺整理アプリ、家族葬と直葬の現状について詳しく紹介します。

エンディング産業展の紹介

エンディング産業展(ENDEX)は、終活市場に特化した日本最大の展示会です。このイベントは、最新の終活サービスや技術を一堂に集め、多くの企業や団体が参加しています。2022年には、第8回エンディング産業展が開催され、3日間で12322名の来場者が訪れました。

この展示会では、葬儀や供養、相続、遺言書作成など、終活に関する幅広い分野の情報が提供されます。特に、家族葬や直葬といった新しい葬儀形態についても紹介されており、実際にどのようなサービスが提供されているのかを詳しく知ることができます。また、各ブースでは専門家による相談会やセミナーも開催されており、個別の質問や悩みに対して具体的なアドバイスを受けることができます。

エンディング産業展は、終活を始めたいと考えている方にとって非常に有益な情報源です。この展示会に参加することで、自分に合った終活の方法やサービスを見つけることができるでしょう。

身辺整理アプリとその利用方法

近年、スマートフォンを利用した身辺整理アプリが注目を集めています。これらのアプリは、エンディングノートのデジタル版として機能し、自分の意思や希望を手軽に記録できるツールです。特にリードライフが提供する身辺整理アプリは、多くのユーザーに利用されています。

このアプリでは、財産情報や連絡先、葬儀の希望などを一元管理することができます。また、定期的に情報を更新することで、常に最新の状態を保つことができます。さらに、アプリ内で写真や動画を保存することも可能で、思い出をデジタル形式で残すことができます。

利用方法も非常に簡単です。まずはアプリをダウンロードしてアカウントを作成します。その後、必要な情報を入力していくだけで、自分だけのエンディングノートが完成します。また、高齢者向けにはスマートフォンの基本的な操作方法を教える教室も開催されており、デジタル機器に不慣れな方でも安心して利用することができます。

このように、身辺整理アプリを活用することで、終活の準備が手軽に進められます。特に忙しい日常生活の中でも、空いた時間を利用して少しずつ情報を整理することができるため、大変便利です。

家族葬と直葬の現状

近年、葬儀の形態も多様化しており、中でも家族葬や直葬が急速に普及しています。家族葬は親族や親しい友人だけで行う小規模な葬儀で、リーマン・ショック後から広まりました。コロナ禍によってさらに需要が高まり、現在では多くの葬儀社が家族葬専用の施設を提供しています。

例えば、名古屋市昭和区にある「ティア荒畑南」は家族葬専用の斎場で、親族が宿泊できる控室も完備しています。このような施設は故人を静かに弔うことができるため、多くの人々から支持されています。また、鎌倉新書の調査によると、家族葬は全体の55.7%を占めており、初めて過半数を超えました。

一方で直葬は、通夜や告別式を行わずに火葬だけを行うシンプルな葬儀形式です。こちらもコロナ禍で需要が増加し、2021年には全体の11.4%を占めました。費用面でも非常に経済的であり、多くのシニア層から選ばれています。

このように、家族葬や直葬は現代のニーズに合わせた新しい葬儀形態として注目されています。これらの形態を選ぶことで、自分や家族にとって最適な方法で故人を見送ることができるでしょう。

以上、終活を支えるサービスとツールについて紹介しました。これらのサービスを上手に活用することで、終活がよりスムーズかつ効果的に進められるでしょう。

次は「終活の課題と今後の展望」について詳しく解説します。

終活の課題と今後の展望

エンディング産業展でパンフレットを手にして歩き回る老夫婦のイラスト

終活市場が拡大する中で、さまざまな課題や新たなニーズが浮かび上がってきています。これらの課題を克服し、適切なマーケティング戦略を立てることで、終活をより多くの人々に普及させることができるでしょう。以下では、終活実施の障壁と新たなニーズとマーケティング戦略について詳しく解説します。

終活実施の障壁

終活を行うことに対して、多くのシニア層が必要性を感じている一方で、実際に行動に移す際にはさまざまな障壁があります。これらの障壁を理解し、解決策を見つけることが重要です。

まず一つ目の障壁は、心理的な負担です。終活は自分の死や将来について考えることになるため、多くの人にとって重いテーマです。特に日本の文化では、死について話すことがタブーとされることもあり、終活を始めることに抵抗感を感じる人も少なくありません。この心理的な負担を軽減するためには、終活をポジティブな視点で捉えることが重要です。例えば、「未来への準備」や「家族への思いやり」といったメッセージを強調することで、終活への抵抗感を和らげることができます。

次に、情報不足が挙げられます。終活に関する情報は多岐にわたりますが、どこから始めたらよいのか、何をすればよいのか具体的なガイドラインが不足しているため、多くの人が迷ってしまいます。特に高齢者にとっては、インターネットやデジタルデバイスの利用が難しい場合もあり、情報収集が一層困難です。このため、終活に関する情報をわかりやすくまとめたガイドブックやセミナーの開催が求められます。また、地域のコミュニティセンターや図書館などで定期的に説明会を行うことも効果的です。

さらに、経済的な負担も大きな障壁となります。終活にはエンディングノートの作成や財産整理、葬儀費用など多くの費用がかかります。これらの費用をどう捻出するかが問題となり、経済的な理由から終活を先延ばしにする人も少なくありません。経済的な負担を軽減するためには、終活に必要な費用を具体的に示し、早めに計画を立てることが重要です。また、一部の自治体や企業では終活支援サービスを提供しており、これらを積極的に利用することで費用負担を軽減することができます。

最後に、家族とのコミュニケーション不足も無視できない障壁です。終活は個人だけでなく、家族全体で取り組むべきテーマですが、家族間での話し合いが不足している場合があります。特に子供世代とのコミュニケーションが難しい場合や、家族間で意見が対立する場合などがあります。このため、家族全員で話し合う場を設け、お互いの意見や希望を共有することが大切です。また、専門家のサポートを受けながら話し合うことで、スムーズに進めることができます。

新たなニーズとマーケティング戦略

終活市場には新たなニーズが生まれており、それに応じたマーケティング戦略が求められています。ここでは、新たなニーズとそれに対応するための具体的なマーケティング戦略について考察します。

まず、新たなニーズとして注目されるのは「引き算終活」と「足し算終活」です。従来は不要なものを整理し、身軽になることが終活の主流でしたが、最近では新たな趣味や活動を始めることで人生を豊かにしようとする「足し算終活」も増えています。例えば、投資信託や株式投資など資産運用を始めるシニア層も増えており、自分自身の生活をより充実させるための活動が注目されています。このようなニーズに対応するためには、終活サービス提供者は単なる整理整頓だけでなく、新しい活動や趣味をサポートするサービスを提供する必要があります。

次に、デジタルツールの利用も新たなニーズとして挙げられます。スマートフォンやタブレットを利用した身辺整理アプリやエンディングノートアプリは、多くのシニア層にとって便利なツールとなっています。これらのアプリは手軽に情報を整理・更新できるため、忙しい日常生活の中でも無理なく終活を進めることができます。デジタルツールの普及には、高齢者向けの操作方法講座やサポート体制の充実が不可欠です。また、アプリ内でのサポートチャット機能やFAQ(よくある質問)の充実も重要です。

さらに、パーソナライズドマーケティングも重要な戦略です。シニア層は一様ではなく、それぞれ異なるニーズや背景を持っています。そのため、一人ひとりのニーズに合わせたカスタマイズされたサービス提供が求められます。例えば、個別相談会やカウンセリングサービスを通じて、個々の状況に応じたアドバイスやサポートを提供することが効果的です。また、メールマガジンやSNSなどを活用して、個別の関心事に応じた情報発信を行うことも有効です。

最後に、新たなマーケティング戦略として地域密着型の取り組みも挙げられます。地域コミュニティとの連携を強化し、地元で信頼される企業や団体として認知されることで、多くのシニア層から支持を得ることができます。例えば、地域イベントへの参加や協賛、地元メディアでの情報発信などを通じて、地域とのつながりを深めることが重要です。また、地域ごとの特性やニーズに応じたサービス提供も効果的です。

以上、新たなニーズとマーケティング戦略について解説しました。終活市場は今後も拡大が予想されますが、その成長にはシニア層の多様なニーズに対応した柔軟な戦略が必要です。適切なマーケティング戦略を立てることで、多くの人々が終活をスムーズかつ効果的に進められるようになるでしょう。

次は「まとめ」について詳しく解説します。

まとめ

この記事では、終活市場の現状とその成長、具体的なステップや支援サービスについて詳しく解説しました。多くのシニア層が終活の必要性を感じているものの、実際に行動に移すには様々な障壁が存在しています。しかし、高齢化社会が進む中で、終活はますます重要なテーマとなっていくでしょう。今後も新しいサービスやツールが登場し、より多くの人々が終活をスムーズに進められるようになることが期待されます。この記事が、皆様の終活に少しでも役立つ情報となれば幸いです。